枯山水の魅力は、抽象的な表現で創り出されている世界を眺めながら、心を落ち着かせ空間の意味を様々な解釈をしながら楽しむところにあります。
日本独自の美意識である「侘び寂び」を感じることができる枯山水は、日本人だけでなく海外の人にも人気があり大注目な観光スポットになっています。
単に眺めるだけでなんとなく美しいなぁと感じれる枯山水ですが、ちょっと前提知識をもっているだけで見方・楽しみ方が変わってきます。
このページでは、そんな枯山水の見方・楽しみ方を丁寧に解説したいと思います。
枯山水を楽しむために必要な事前知識
枯山水とは、水を一切使わない庭園のことで、石、砂、草木を使用し山や海などの雄大な自然風景を表現する日本庭園の様式の1つです。
大名庭園のような豪華さや派手さはないものの、向き合うことで心に癒やしをもたらしてくれる日本独特な観光地として人気が高まっています。
そんな枯山水には、無の境地に至る禅の思想が注入されています。
禅の影響で生まれた美意識「侘び寂び」を理解することが、枯山水を楽しむポイントになります。
侘び寂びとは?
では、「侘び寂び」とは一体どのような美意識なのでしょうか。
「侘び寂び」は、「侘び」と「寂び」の2つの言葉から成り立っています。
「侘び」は、「つつましく質素なもの」を意味し、真意としては「貧困」を表します。
応仁の乱によって京の都が荒廃したことから、発展した枯山水。
世問的な事物(お金や名声)に頼らず、つつましく質素なものこそが美しいという美意識です。
「寂び」は、「時間の経過とそれに伴う劣化」を意味し、古いものからにじみ出る美しさを表します。
また、静寂の意味も含まれ、利己的な思想を抱かず「無我」になることで、悟りに近づくと考えられています。
侘び寂び、つまり、質素なこと、足らないこと、趣があることが、逆に想像力を刺激し深い美が表現されているのです。
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枯山水の楽しみ方ポイント
そんな「侘び寂び」を感じながら、空間の意味を自問自答しながら眺めるのが枯山水の楽しみ方の一つです。
空間の意味をどのように視点で解釈するか?は大きく2つに別れます。
- 自然風景をイメージする楽しみ方
- 仏教の世界観、宇宙観をイメージする楽しみ方
自然風景をイメージする楽しみ方
枯山水は、水を使わずに大自然を表現する庭園様式なので、そこには自然風景が広がっています。
砂を使って大海が表現され、石を使って島が表現されています。
仏教の世界観、宇宙観をイメージする楽しみ方
大自然をイメージすることができたら、次に仏教の世界観、宇宙観をイメージしてみましょう。
枯山水の見方ポイントは?何を表現しているの?
枯山水の見方は、それぞれの要素が何を表現しているか?知ることがポイントです。
枯山水が表現するものはおおきく3つあります。
- 自然風景
- 仏教
- 鶴や亀
自然風景を表現する枯山水の見方
枯山水で自然風景を表現するものは、大きく4つあります。
- 海
- 川
- 山
- 滝
海を表現する枯山水
枯山水で海を表現する場合には、砂紋が使われることが多いです。
砂紋で波や渦を描き、大海が表現されます。
川を表現する枯山水
枯山水で川を表現する場合には、砂紋が使われることが多いです。
日本庭園での水の流れを遣水(やりみず)と呼ぶのですが、その遣水が砂紋で描かかれます。
山を表現する枯山水
石を組み合わせて、連なる山岳風景を表現する石組みを連山石組といいます。
連山石組みは、背景として使われることが多く、枯山水に遠近感をもたらします。
滝を表現する枯山水
枯山水では、水を使わずに石を組むことで大自然の滝が表現されます。
この表現方法を枯滝石組といい、その中でも中国の登竜門の故事を表現する龍門瀑と呼ばれる石組があります。
仏教を表現する枯山水の見方
仏教の世界には須弥山という三千大千世界という宇宙観があります。
そのなかで、中心に存在する山を須弥山といいます。
須弥山のてっぺんに、有頂天とよばれる神様の住む世界があります。
そんな仏教の宇宙観を表現する枯山水の庭園があります。
鶴や亀を表現する枯山水の見方
昔から、鶴は千年、亀は万年の長寿を願う思想があります。
枯山水では、そんな鶴や亀を石を組み合わせることで表現します。
石を組み合わせて鶴や亀を表現することを、鶴亀石組といいます。
枯山水の構成要素
枯山水庭園を構成するそれぞれの要素が何を表現しているか?知っておくと、枯山水庭園の鑑賞がより楽しくなるでしょう。
砂
枯山水の見どころの1つである砂紋。
白砂に模様を描き水を表現したものを「砂紋」と呼びます。
砂紋にはいくつか種類があり、川を表現したり、海を表現したりするものがあります。
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石
水を一切使わずに自然風景を表現する枯山水において、石組は重要な要素の1つです。
石組みのなかでも、自然風景を表現する石組み、仏教の世界観を表現する石組みなど、たくさんの種類があります。
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枯山水の見方・楽しみ方まとめ
繰り返しになりますが、枯山水の魅力は、心を落ち着かせ空間の意味を様々な解釈をしながら楽しむところです。
様々な解釈を感じるための事前知識を学んでおくのが、枯山水めぐりをぐんっと楽しくするポイントです。
・枯山水を楽しむには禅宗の美意識「侘び寂び」の理解が大切
・自分自身と向き合いながら空間が何を意味するか自問自答を繰り返す
・自然風景をイメージできたら、仏教の世界観、宇宙観をイメージする
・枯山水を構成する要素が何を意味するか?知っておく